SUBARUは、2008年からニュルブルクリンク24時間レースに出場。2019年までに6回のクラス優勝(SP3Tクラス:2L以下のターボ車)を果たしています。そんなレース現場に、SUBARUは毎年、厳しい選考を経たディーラーメカニックを派遣しています。メカニックたちは、ミスの許されないレースの現場で、メカニックの技術を高めるだけでなく、多くのスタッフと連携して働くチームワークやコミュミュニケーションのあり方を学びます。ここでは2019年6月に行われたレースに派遣された福島スバル浦山大介メカニックにお話を聞きました。
小学生の頃、SUBARUのラリーカーのチラシや、様々なクルマの雑誌記事などを集めていたのを覚えています。そんなクルマ好きがそのまま大きくなったような人間ですし、ニュルブルクリンクは有名なサーキットですから、もちろんレースの存在は知っていました。でも自分がそこに行けるものとは正直思っていませんでした。
でも、同じ福島スバルの先輩が2017年、2018年とNBRに派遣されているのを見て、自分も行けるかもしれないと思いました。この2人の先輩がいなければ、NBRに行きたいとは思わなかったかもしれません。
ディーラーメカニックの仕事は、主にドライバー交代などでピットに入ってきたクルマのタイヤ交換を中心としたメンテナンスです。
NBRのバックストレートに入るとドライバーからインカムを使って合図が入ります。そうすると、私たちはタイヤや工具を持って、すぐにタイヤ交換ができる体勢をとって待ちます。クルマが入ってきたら、ドライバーがコースを走行中は、取り外したホイールを洗ってタイヤ交換の準備をしたり、レースに向けてタイヤを温めたりと、様々な作業をしています。
全国のSUBARUディーラーメカニックの中でも、SUBARU独自の認定資格でテクニカルスタッフ1級もしくはS級という高い資格を持ったメカニックの中から、厳しい審査に通った8名のメカニックが派遣されます。審査は、書類だけでなく、実際にクルマのパーツ交換作業の様子を収めた動画での審査もあります。(SUBARUの認定資格制度についてはこちら>>)
決まった時間内に作業ができているか、効率良く動けているかだけでなく、取り外したパーツや取り付けるパーツを丁寧に扱っているか、使い終わった工具をきちんとあるべき場所に戻せているかなどにも気を使って作業をしました。
選考に提出する動画は、福島スバルから、2017年、2018年にNBRに行った先輩2人に全面的に協力していただきました。最初に課題の作業に挑戦してみたときは大幅に時間が掛かり規定時間内にはできなかったのですが、先輩方にアドバイスをいただきながら、何度も練習しました。実際にNBRに参加したことがあるからできるアドバイスはとても心強かったですね
また、実際にレース期間中は2週間近くお店を留守にしてしまうのですが、その際には近隣の店舗のメカニックの方々がサポートに入ってくれました。今回、NBRに行けたのは、2人の先輩を始め、多くの方の協力があったから。本当に感謝しています。
レースまでの準備などはあまり変化がないかと思いますが、レース当日は2班に分かれての作業となりました。スタートは8名全員で見送り、その後、A班が作業を担当、B班は宿に戻ってオフ、レース中盤でB班がピットに入って、A班はオフ、ゴールは再び全員で迎えるという分担でした。私は、B班だったので、スタートを見届けたら宿に戻ったのですが、緊張して全く眠れませんでした。
通常のピットインではタイヤ交換がメインですが、私はブレーキパッド交換も行ないました。現場にはあらゆるパーツが交換できるように準備されていますが、それでもブレーキパッドも交換するという指示が入った時は、本当に緊張しました。
後で聞いたのですが、レースを走ってきた直後のブレーキパッドは摩擦熱で400度にも達するのだそう。通常の作業用グローブも簡単に溶けてしまうくらいの温度なので、耐火布で持ちながら作業をします。こんな温度のパーツを扱うことは後にも先にもないのではないかと思います。
NBRのSUBARU/STIチームは総勢30名ほどですが、普段は別々に働いているスタッフが1つのチームになります。そこで強く感じたのはコミュニケーションの重要性です。特に普段はディーラーで働いている私たちは、3月のシェイクダウン以外は、本番のレース期間中しかチームと合流できません。それでも、短期間にチームワークを深められるのは、全員がコミュニケーションを取るということに、積極的だったからだと思います。そういうところは、店舗での業務にも生かしていきたいと思っています。
また、帰ってきてから気づいたのは、思っていた以上にお客様がレースを見ていてくださっているということ。「見ていたよ」「お疲れ様」とたくさんのお声をかけていただきました。本当にありがたいなと思いました。
それから、一緒にディーラーメカニックとしてNBRを経験した8名の仲間を得たことも変化の一つかもしれません。